総務省が、「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針(案)」に寄せられた意見に対する考え方を発表しました。
この指針は、携帯3大キャリアによる端末が特定の携帯キャリアでしか利用できないSIMロックの解除と、端末を購入した者に対する割引による格差を是正することを目的としています。
今回のパブリックコメントで寄せられた、携帯3大キャリア、MVNO事業者、一般ユーザーの意見と総務省の回答を見て、私なりにまとめてみました。
斜め読みをして、必要なところだけ私が感じたように意訳しているので、あくまで私個人の感想として御理解ください。
全てを見たい方は、総務省ホームページの報道資料に掲載されていますので、そちらもご覧ください。
目次
SIMロック解除の円滑な実施に関するガイドラインについて
携帯キャリアが販売するスマートフォンには、よそのキャリアのネットワークで利用できないようにする、いわゆる「SIMロック」がされています。
このロックを解除する、いわゆる「SIMロック解除」に対する要望があることから、総務省がガイドラインにまとめました。
ガイドラインをざっくり言うと、「携帯キャリアが販売した端末は、ユーザーの求めに応じて100日程度を超えない期間でSIMロック解除をしなさい。」という内容になっています。
このガイドラインに寄せられた意見と総務省の回答の一部は次のようになっています。
NTTドコモ
- 100日程度の幅の考え方を示してね。
総務省の回答
- 程度の幅は10日ぐらいだよ。
KDDI(au)
- システムの開発が大規模となるので平成29年12月1日には間に合いません。
- 自分のネットワークを利用するMVNOにSIMロックをかけるのは、未払いや転売を抑止する必要最小限の措置になりますよね。
総務省の回答
- 3月を超えない期間は許してやるよ。
- ネットワーク利用制限ができるのにSIMロック解除までするのはやり過ぎだろ。
ソフトバンク
- 平成27年5月以降の新機種は全部SIMロック解除をしているけど要望は少ないし、この運用が始まって間もないのにそこまで見直す必要があるの。
- 一括購入の場合はすぐにSIMロック解除をしろと言われてもシステムの開発などのコストが増えるデメリットが大きいよ。
総務省の回答
- SIMロックがないのが本来なのに最小限のことぐらいはやってよ。
- そっちの都合でロックしているのに、システムの開発が必要だからと言ってSIMロック解除に応じないのはおかしいでしょ。
MVNO事業者
- 利用者が便利になるし、競争拡大につながるから賛成するよ。
- SIMロックについては、これからもっと見直しをしてね。
- MVNO向けのSIMロックを廃止してくれると転出しやすくなるので賛成です。
総務省の回答
- 賛成してくれてありがとう。
- キャリアのチェックと見直しをしていくよ。
一般ユーザー
- このガイドラインは消費者が求めているものからピントがずれているよね。
- MVNOつぶしとなるテザリングが使えないことについても考えて。
- 一括払いをした端末はすぐにSIMロック解除をさせて。
総務省の回答
- SIMロックは、携帯のキャリアを替えたり海外で使いたいという要望があるし、端末購入補助は料金の高止まり、利用者間の不公平、MVNOの成長を阻害するおそれがあるからガイドラインを作るんだよ。
- SIMロックを解除すれば本来使える機能を使えるようにさせるよ。
- 端末代金が支払われたのが分かればSIMロック解除に応じるべきだよね。
スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドラインについて
スマートフォンの価格が高くなっている中で、3大キャリアがMNPで転入する利用者にだけ高額な割引をしていました。
これが携帯料金の高止まりの原因と指摘されるとともに割引を受けない利用者との不公平やMVNOの新規参入・成長を阻害するという観点から、総務省が端末購入補助の適正化に向けたガイドラインをまとめました。
ざっくり言うと、「MNPだけが優遇されて実質0円にならないよう下取りも含めて端末購入補助の金額を見直せ。」という内容になっています。
このガイドラインに寄せられた意見と総務省の回答の一部は次のようになっています。
NTTドコモ
- いわゆる解約新規もMNPと同じ扱いにしてね。
- ソフトバンク傘下のYモバイルでiPhone5sを100円で販売しているけどこれはどうなの。
総務省の回答
- 解約新規もMNPと同じ扱いにするよ。
- 在庫は行き過ぎた額とならない範囲で端末購入補助をできるよ。
KDDI(au)
- MNPを条件とする割引やポイント還元まで端末購入補助の対象にするのは携帯キャリアの自由な競争を抑制するんじゃないの。
- 合理的な額の基準に端末の下取り価格を使うのはおかしいんじゃないの。
総務省の回答
- MNPは端末購入が伴うし、ポイント還元も線引きが分からず、利用者間の不公平感を解消できないから端末購入補助に含めるよ。
- 下取りに関係なく端末の調達費用に照らして合理的な額の負担を求めるだけだよ。
ソフトバンク
- 端末価格が上がって利用者に影響が出るから販売状況等を観察して規制の内容を見直してよ。
- 端末購入補助の拡大解釈で、利用者の負担を軽減する割引サービスが軽減されたり、シェア2位以下の会社による顧客獲得が不利となって、結局ドコモだけが得するじゃないか。
- 家族複数回線の獲得、家電製品とのセット購入時に増額される販売奨励金や別法人の固定通信事業を悪用した販売奨励金が出たりしないよう注意してね。
総務省の回答
- 価格や販売状況を見て必要があれば見直すよ。
- MNPの割引は端末購入補助なんだよ、ただ端末購入やMNPに関係なく提供される割引は端末購入補助にはならないよ。
- MNPの契約に応じて支払われるものは含まれるので、動向を見て見直すよ。
MVNO事業者
- 端末購入補助の適正化が携帯電話市場の健全な発展につながるから賛同するよ。
総務省の回答
- 賛同する意見ありがとう。
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会
- 2016年度上半期の携帯電話出荷台数は過去最低になったというデータもあるし、やりすぎると端末が売れなくなってしまうんじゃないの、それより料金が分かりやすく、安くなったことを理解してもらえることをしっかりやってよ。
総務省の回答
- 携帯電話の料金は利用者が理解できるよう情報発信するよ。
一般ユーザー
- 端末価格の値引きが規制されてもデータ通信量は安くなっていないじゃないか。
- 端末代金が上昇し、利用料金が引き下げられないでのあれば値上げにしかならない。
- このガイドラインのせいで消費者の負担が増えているんだけど。
- 政府の下手な介入のせいで消費者は大迷惑して、3大キャリアは大黒字で、誰のためのガイドライン。
- 一括0円のおかげで買い替えやすかったのに、総務省の余計なちゃちゃのおかげで負担増です。
- ドコモ、au、ソフトバンクを儲けさせるためにやったの。
- ドコモを有利にすることのみを追い求めて指針は論外である。
- 購入時の携帯代金が高騰しただけで毎月の携帯代金は全く変わっていない。
- 毎月の維持費が安くなる新料金プランは出てないが、これに対する指導や働きかけはないのか。
総務省の回答
- これまでの取組で通信料金は低くなってきているけど、まだまだ安くさせる必要はあるよね。
- これからもSIMロック解除の円滑化、端末販売の適正化、MVNOが3大キャリアに支払う接続料の適正化など、競争を更に加速するための取組を進めて料金が安くなるようにしていくよ。
まとめ
パブリックコメントに出ていた一部の意見と回答をまとてみましたが、あなたはどう感じられましたか。
シェア1位のNTTドコモは、2位のauと3位のソフトバンクが余計なことをしないようにこのガイドラインで見張って欲しいという意図が感じ取れました。
auとソフトバンクにすれば、このガイドラインに従っていては他キャリアから顧客を奪えないので反対する意図が感じ取れました。
一般ユーザーからは、このガイドラインの恩恵を全く受けていないので厳しい意見が出ています。
ちなみに通信料金に関する一般ユーザーからの意見で、安くなったというものは1件もありませんでした。
私も携帯電話の料金は全く安くなっておらず、今後は端末購入代金の負担が増えるのが目に見えています。
これだけ一般ユーザーからの意見が出ているにもかかわらず、総務省は一定の成果が出ていると言っていますね。
それであれば、スマホの料金が安くなったと実感している人がいるのかアンケート調査をしてもらいたいです。
ガイドラインによってスマートフォンの価格と携帯電話の料金が、今後どのように変わっていくの見ていきます。